「お帰りなさい。お疲れ様。お腹空いてる? ペコペコ? ご飯の前に、したいな……」
妻の有美が、私の仕事バッグを受け取りながら甘えたように言ってきた。そのはにかんだ姿と、可愛らしい言い方に、改めて可愛らしいなと思う。私は、すぐに彼女を抱きしめてキスをした。嬉しそうに舌を絡めてくる有美……小柄な身体を抱きしめていると、愛おしい気持ちが大きくなる。
有美は、4歳年下の28歳で、150センチあるかどうかの小柄な身体をしている。顔もかなり童顔なので、いまだに女子大生や、もっと若く間違えられることもあるが、中身はエッチの好きな大人の女性だ。
私は、外資系の保険会社に勤めていて、収入はかなり良いが忙しい。いつも疲れていることもあり、それほどセックスをしたいという欲がない。でも、こんな風に有美の方から誘ってくれると、話は別だ。
有美を抱きしめながら、キスを続けていく。収入も良いし、妻も可愛くてエッチ……最高の人生のはずだ。でも、私は有美が浮気していることを知っている……。
有美の浮気に気がついたのは、本当にたまたま偶然からだった。顧客の経営する会社の事務所を訪ねた時、有美が他の男と手を繋いで歩いているのを見かけてしまった。有美は、茶髪の若い男性と歩いていて、動揺しながら後をつけると、そのままホテルに消えた……。
絶望的な状況だった。でも、私は自分が怒りではなく興奮を感じていることを自覚し、自分自身戸惑った。その後の私が取った行動は、今でも不思議に感じる。どうしてそんな選択をしたのか、正直あまり覚えていない。たぶん、精神的なショックと、異常な興奮のせいだと思う。
私は、有美に問いただすこともせず、離婚を考えることもなかった。探偵事務所を訪れ、有美と男性のことを調査してくれるように頼んだ。
「え? そ、その……奥様と相手との、性行為の動画ですか? そんなのなくても、離婚訴訟は問題なく勝てますよ?」
探偵は、私の要望に戸惑いの顔を見せた。でも、繰り返しお願いする私に、なんとなく察したような顔になりながら、結局同意してくれた。
「表には出せない動画になりますからね。それは、理解してください」
探偵は、そんなことを念押ししてきた。私は、撮影が出来る前提で話をする彼に、驚きを覚えた。そんな動画の撮影なんて、不可能だと思っていた。でも、彼は撮影に関しては何の問題もないと思っているようだった。少しだけ、探偵業界の闇が見えて気がしたが、受けてくれて良かったと思う気持ちが大きい。
動画は、1週間もしないうちに私の手元に来た。
「あまり見ない方が良いと思いますけどね……奥様と、離婚はしないつもりなんですよね? だったら、見ないことをお勧めしますよ」
探偵は、データを渡しながらそんな言葉を口にした。その口ぶりに深刻な何かを感じ、怯んでしまった。でも、私はその足で個室ビデオ試写ルームに移動した。さすがに、自宅で見るのははばかられる。ものがものだけに、どこで見ようかと悩んだあげくだ。
初めて入る試写ルームは、まったく未知の正解だった。数人のお客さんがいて、スーツだったり作業着だったり、学生っぽい男性もいた。驚いたのが、かなり年配の方もいたことだ。恐らく、70は越えている……80近い? そんな年齢の男性も、真剣にDVDを選んでいた。
一種、異様な光景だった。誰もしゃべることもなく、黙々とDVDを選んでいる。どうやら、部屋の中に持ち込めるのは5枚までと決まっているようだ。でも、5枚を返せばまた5枚まで借りられるので、実質無制限という事みたいだ。
私は、有美の動画を見ることが目的なので、適当に5枚を選ぼうとした。でも、ついついというか、意外なほどに真剣に選定してしまった……。
個室は、何種類かあるようだ。リクライニングチェアーの部屋、フラットシートの部屋、少し広めの部屋などがある。私は、よくわからないながらもフラットシートの部屋にして、そちらに移動した。
部屋は、かなり狭い。一畳? さすがにもう少し広いかもしれないが、そんな印象を持つくらいの縦長の狭い部屋だ。奥にはテレビとDVDデッキがあり、デスクトップPCまである。テレビは、恐らく50インチくらいありそうな大きなもので、壁に取り付けられている。
私は、借りたDVDの一枚を再生しようとした。でも、ここに来た目的を思い出し、慌てて自分のノートパソコンを取り出してデータファイルを覗いた。すると、動画ファイルが数本あった。私は、猛烈にドキドキし始めていた。本当に、撮れたのだろうか? このファイルは、有美が他人とセックスしている動画? 本当に、有美は浮気していた? ラブホテルに男性と一緒に入って、セックスをしないとは思えない。
再生を始めると、ベッドが目に飛び込んできた。かなり大きなベッド……クイーンサイズ? とにかく大きい。そして、ベッドの上には、ガーターベルトの下着姿の有美がいた。黒のランジェリーは、私が見たことがないゴージャスなものだ。ガーターベルトにストッキング、ランジェリーモデルの写真のようだ。
そんな有美が映っていて、早くも淡い期待は消えてなくなった。画像が良い……あまりにも鮮明だ。****とかしているはずだが、普通に撮影した動画にしか見えない。
「ねぇ、まだ~? 早く来て。我慢できないよ~」
有美が、甘えたような声を出した。その媚びたような声に、かなり動揺してしまった。彼女がこんな声色でしゃべるのを、今まで聞いたことがなかった。
「待って、今洗ってるから。有美、潔癖じゃん」
若い男の声が響く。まだ姿は見えないが、しゃべり方や声で、けっこう若い印象だ。
「だって、直哉、雑なんだもん。どうせ、それも剥き出しのまま置いてるんでしょ?」
有美の口調が、本当に砕けている。恋人に話をしていると言うよりも、友人に話をしているみたいだ。
「いや、ちゃんと仕舞ってるって。さすがにこれは剥き出しで置いとけないでしょ」
二人は、楽しげだ。この導入部分だけで、すでに私はダメージを感じている。でも、10代に戻ったごとく、激しく勃起してしまっている……。
すると、若い男性がフレームインしてきた。彼は、白いプラスチックの洗面器に、大人のオモチャをたくさん入れて持っている。大小様々のバイブに、電マ、見たことのない器具も入っている。
こんなものを使っている? あの有美が? きれい好きで、真面目な有美が、大人のオモチャを? もしかしたら、これは有美じゃないのではないかと思った。間違えて、よく似ている人を撮ってしまったと……でも、声も仕草も、有美そのものだ。
「ねぇ、先にして。たまには直哉のからしようよ」
有美は、そう言って甘えた仕草を見せる。すると、直哉はベッドの上に上がり、仰向けで寝転んだ。全裸姿で、痩せすぎの身体が映っている。髪はやっぱりかなり茶色くて、ピアスなんかも見える。見た印象は、ホストっぽい。
「なんでまだ立ってないのよ。私がせっかくこんな下着買ってきたのに」
勃起していない状態を見て、不満そうな有美。やっぱり、私の知っている有美とは思えないような言動だ。
「ゴメンゴメン。ほら、俺モテるから。やり過ぎて鈍感になっちゃってるんだよ」
余裕たっぷりに答える彼。でも、確かにルックスはかなり良い。
「そんなの良いから、早く立たせてよ。溜まってるんだから」
有美は、焦れたように言う。でも、言いながらも彼に近づき、乳首を舐め始めた。有美は、躊躇なく彼の乳首を舐めている。そして、当たり前のように彼のペニスをしごき始めた。どう見ても、慣れている動きで彼を勃起させようとしている。
「旦那とは? してるんだろ?」
「してるよ。気持ち良くもなんともないけど。しないと、疑われちゃうし」
「そんなこと言って、ホントは愛してるんだろ?」
「別に、嫌いではないけど、そんなに好きでもないし。だって、チンポ小っちゃいし、早いし、工夫もなにもしてくれないし」
「有美から言えば? ぶっといディルド使ってよって」
「そんなの私の方から言ったら、怪しすぎるでしょ。それに、言われてから使っても、白けちゃうでしょ? 直哉みたいに、淫乱な私を満足させようって気持ちが嬉しいんじゃない」
「なるほどね、女心って面倒くさいな」
「ホストが言うな」
有美は、吹き出すように笑っている。でも、笑いながらも手コキも乳首舐めもしていて、直哉のペニスはグングン勃起していく。探偵さんの、見ない方が良いという言葉が頭をよぎった。当然のことながら、探偵さんはこの動画を見ているはずだ。その上で、同性のよしみでアドバイスをしてくれたのだと思う。確かに、見ない方が良かったと後悔するような内容だ。
「フフ、大っきくなった。ねぇ、後ろからねじ込んで。オマンコメチャクチャに犯して」
有美は、セクシーなランジェリー姿のまま四つん這いになった。そして、ショーツを脱ぐことなく、秘部の部分をずらすようにして膣口をあらわにした。
「マジで淫乱だな。ホント、有美って見た目と中身が一致しないよな」
「清楚な見た目なのに、淫乱ってこと?」
「まぁ、それもあるけど、優しそうな顔してるのに、性格悪いところとか」
酷いことを言う彼。でも、有美は怒った様子もなく、
「まぁね。でも、上手く隠してるし」
と、あっさりと答えた。性格が悪い? 隠している? あまりの情報量の多さに、オーバーヒートしてしまいそうだ。これは、現実だろうか? 有美が、私の悪口まで言っている。どうしても信じられない。
直哉が有美の後ろに回り込むと、有美はスッと膣口を指で拡げた。少しでも早く挿入して欲しいという態度だ。
「あっ、ゴムは?」
「平気。早く」
そんなやりとりをした直後、直哉は生のペニスを突き立てた。
「うぅっ、あぁ、太い……でも、カチカチじゃないじゃん! ねぇ、おチンポもっと固くして。固いのが好きなの。知ってるでしょ?」
少しイラッとした口調の有美。生のペニスを挿入されたまま、そんなことを言っている。